絵とことば

黒瀬あうん。創作家。小説家。詩人。僕の生きた証を、ここに。

ことば

夢の中でも貧乏

私は千円札を五枚握りしめていた。 おぼろげではあるが、そこには知った仲間の幾人かが、いた。 何かの祝いごとのためであったろうが、今は想い出せない。 中央のテーブルには蓋の開いた缶ケースが置いてあり、 誰がいくら出したかは、みんな敢えてそこから…

桃色の貝

「何故に会いたいときに会えないの。 今日会えなければ、 わたしは死んでしまうかもしれないのに。」 俺は泣いてしまうだろう 潮騒とともに 引き寄せられた薄い桃色の貝が 浜辺に顔を出す ひんやり濡れた足許の さらさらの砂の上から 両の手の平におさめて …

或る阿呆の残滓

残り滓がつべこべ云わせてと云っているのさ。 どうせ死ぬるなら、道端に痰を吐き捨てたって誰も文句は云わないだろう。 神さまのバチもあたらないだろう。 おっと向こうから、がっちりした体躯の青年がやって来る。 奴に何か云ってやろう。 失うものは何もな…